FROM FRONT フロントより

早起き再開。
じゅうじつの気分。

この時季の朝
ふと思い出すことがあります。

20代の最初のころだったか
カメラマンに憧れて
見習いアシスタントとしてね
コマーシャルスタジオに入ったんだけど
ああ、思い出すなあ
つらくてね。へっとへっとだった。

それでも早朝の
出勤前にカメラを持って
写真を撮っていたっけ。

写真を好きになって
たくさん撮るようになって
なんか面白いなとなって
よくわからないけど写真を続けていくには
カメラマンになるのがいいと思った。

でも、そのころの僕は
自分の好きな写真を撮りたかった。
気になる場面や風景を見つけたら
気ままにシャッターを押して
本なんか出したら最高だぜって
ばくぜんと思っていた。

その道のりとして
地元のスタジオに入ったのだけど
どうも憧れは遠いぞと感じる。

チラシの商品写真なんて撮りたくない。
自分は才能にあふれているんだ。
そんな気持ちでいるもんだから
ぜんぜん覚えないし
どこか生意気だったとも思う。

場違いと勘違い。

つらかったなあ。
眠たいし
焦りもするし
自信がすり減っていくのがわかるの。

プロなら
どんな被写体も
お客さんの求めたもの以上に
より高いクオリティーで
より速く仕上げる。

このお客さんのために
技術を磨くという感覚が
当時はピンときてなかったんだと思う。

そのスタジオで
プロのすごみを叩きつけられた人がいて
その人の仕事ぶりというか
根性みたいなものを知るほど
自分には無理だと思った。

結局、辞めることになるんだけど
秋のね
昼間の静かな大通公園だったか
たぶん、落ち込んでいるのがまるわかりの
とぼとぼと心もとなく歩いて帰って。

挫折ってこういうことなのかとか
道が経たれたような不安とか
ぐるぐるモヤモヤと渦巻いて
そんなときに限って
とってもいい天気でね
ピクニックなら最高だってくらい
高く澄んだ空だったの覚えている。

で、
あ、そっかとひとつわかったんです。
ここじゃなかっただけ。
残念だけど
それがわかったならラッキー。
ここじゃないってことは
あとほかぜんぶありってことじゃん。

ゆっくりと
腰がピンと伸びていったような
太陽のまぶしさを再確認したような
なんだろう
抽選のガラガラをまわして
ポツンと当たりの玉が出たみたいな
当たりといっても
特賞ではないんだけど
頼りないひとつの玉が
救いになったんだよね。

当時のお世話になった人には
申し訳ない気持ちもあるけど
開き直ることができてよかったと思う。

道のりは
いろいろあるし
道もいろいろあるから
どんどん選べばいいと思う。

長くなってしまったので
このへんにしておこう。
だけど、思い出すんだよね
つらくてつらくて
へっとへっとで
まぶしくて清々しいあの感触。

自分の失敗は
誰かの役に立つときがくるよね。
今日もごきげんでありましょう。