FROM FRONT フロントより

それもしかして、宝?

そんなこと思う出来事がありました。
ついさっき
朝、市電で事務所に向かうときのこと。

向かいのシートに男性が座りました。
観光でしょうか
小さめのキャリーバッグを持って
半袖短パン、20代後半くらいの男性です。

その席
優先席だったこともあり
ちょっと気になったんですね。
あ、ふつうに座るタイプなんだと。
気づいてないのかもしれないから
そこを責めるようにとらえないでおこう。
なんてこと自分と会話していると
その男性が
おもむろに耳をほじほじしたんですね。
で、手を耳から話したとき
なにかつかんだ指のカタチしてたんです。

お金のポーズ?
ひとさし指と親指がくっついて
ふたつの指が円になっているカタチです。
たぶん
ひとさし指で耳ほじほじしたところ
なにか収穫物があったんでしょうね。
そのまま親指でつまんだと察します。

それどうする?
もう、目が離せない。

すーっと
耳から膝もとにおろしたその右手
まだ、お金のポーズのままです。
ちょっと、こねこねさせています。

こねこねさせたら
もう、あとはポイじゃないのか。
ホップ・ステップ・ジャンプみたいな
リズムに乗って、ああ今にも放り出しそう。

すると、
お金マークをキープした右手は
左手のほうまで移動して
こねこねさせていたものをパスしました。
持ちかえた?
左手はポケットの入り口にある。
もしかして、
ポッケにしまうのか!

興奮しています。

いいやつじゃないか。
優先席に無自覚に座るけど
耳ほじほじしてとれたものを
ひとまずポッケにしまうなんて
ご両親に大切に育てられたに違いない。

ん?

彼の左手はお金のマークをキープしたまま
ポケットから財布を取り出しました。
ズボンのサイドポケットに入るくらいの
小銭入れです。
チャック式で全開すると両開きになって
小銭がとりやすいタイプのやつ。

え?

どうするのかと思ったら
小刻みにこねこねくるくるして
すっとその小銭入れに
なんらかのブツをしまったのです。
まさに
ホップ・ステップ・ジャンプのリズム。
とどこおりのない所作で
財布取り出す、開ける、入れる。
見惚れてしまったのと
脳内で情報処理が
バグってしまった感覚になりました。

どういうことなんでしょうか。

ゆっくり冷静に考えます。
決めつけず
おおらかな思考で。

耳くそ?かもしれない
なんらかのものを
小銭入れにしまった。

捨てる場所がなかったから?
それは安易すぎる。

あ!

それもしかして、宝?

そうです。
冒頭の言葉です。

耳くそなんかじゃない。
砂金のようなものが
耳から出ているのかもしれない。
物質の特定は難しいけれど
小銭入れにしまうってことは
金銭と同じくらいの価値があるのか。
彼にとってその小銭入れは
宝箱なんじゃないだろうか。

答えは謎のまま
彼は優先席を立ち
ぼくより先に市電を降りました。

その小銭入れの中身
どんな状況になっているのか。
気になります。

実にどうでもいい
ミステリーでした日常っておもしろいね。

今日もごきげんでありましょう。